テンションファブリック|誉展示会装飾

展示会のブースを検討するとき、多くの場合は背面のバックウォールから決めていきます。何を書くか、どんなビジュアルを載せるか。そこにいちばん時間をかけます。

ところが会期当日、会場に立ってみると気づくことがあります。あれだけ考えたバックウォールが、正面の通路を歩いている人にしか見えていないのです。

来場者は、正面からだけ来るわけではない

テンションファブリック|誉展示会装飾

展示会場の来場者は、通路を直進しているとは限りません。交差点で曲がり、斜めに横切り、目当ての小間を探しながら視線を左右に動かしています。

平面のバックウォールは、この動きに対してひとつ弱点を抱えています。正面から見たときに最も情報量が多く、角度が浅くなるほど読み取れなくなり、真横からはほぼ見えません。つまり、通路上で自社のブースが認識されるのは、正面を通過する短い区間だけということになります。

小間の中でどれだけ作り込んでも、そもそも来場者の視界に入らなければ立ち止まってもらえません。ブース設計で先に考えるべきなのは、「何を見せるか」よりも「どこから見えるか」です。

小間は「面」ではなく「立体」で考える

1小間は3m×3m。この数字だけを見ると狭く感じますが、実際には高さ方向にも空間があります。展示会の高さ制限は一般的に2.7m〜3.6m程度に設定されており、床面積は使い切っていても、上方の空間は空いたままというブースが少なくありません。

そして、上部の空間ほど遠くから見えます。人の頭より高い位置にあるものは、通路の先からでも、離れた列からでも視界に入るからです。

高さ 認識される距離の目安 担う役割
2m以上 会場の遠くから/別の通路から 社名・ロゴ。存在を知らせる
1.2m〜2m 同じ通路の数小間先から キャッチコピー。何の会社か伝える
1.2m以下 ブースの前まで来てから 製品・詳細情報。立ち止まった人に説明する

平面のバックウォール1枚は、このうち中段しか担えません。遠距離からの認識を担う要素が、別に必要になります。

平面ではつくれない形を組めるのが、テンションファブリック

テンションファブリックは、アルミフレームの溝に生地の縁を押し込み、テンションをかけて張る方式です。ここで見落とされがちなのが、この方式は平らな面である必要がないという点です。

フレームは曲げた形状で製作でき、生地も曲面や筒状に合わせて縫製できます。そのため、平面のパネルでは物理的に成立しない形が、そのまま実体として組めます。曲げた壁、円柱、アーチ、天井から吊るす立体。いずれも同じ張り込みの仕組みで、面はピンと張られたまま構成できます。

しかも布と細いフレームでできているため、立体にしても重量が大きく増えません。ここが、造形の自由度を実際に使える理由です。

立体構成の型と、それぞれが効く場面

アーチ型テンションファブリック

曲面バックウォール(アール壁)

背面を緩やかに湾曲させると、正面だけでなく斜め方向からも面が見えるようになります。認識される角度の幅が広がるため、通路の手前側からブースに気づいてもらいやすくなります。内側に凹ませた形にすれば、来場者を包み込むような空間になり、立ち止まった人が滞在しやすくなる効果もあります。角小間や、通路に長く面する小間で特に有効です。

円柱タワー・サインタワー

360度どの方向からも見える形状です。小間の角に高さのある円柱を立てると、正面通路以外からも社名が読めます。1小間のように壁面が限られる場合、床面積をほとんど取らずに遠距離からの認識を確保できる方法として現実的です。

アーチ・ゲート

小間の入口をアーチで縁取ると、通路を歩く人の視線が自然にブース内部へ向かいます。「入っていい場所」であることが形として伝わるため、ブース内に入ってもらう設計をしたい2小間以上で効果を発揮します。

吊り下げ(ハンギングサイン)

天井から吊り下げる構成は、会場内で最も遠くから見える手段です。四角、三角、円形、リング状など形状を選べます。ただし吊り下げの可否と条件は展示会ごとに大きく異なり、そもそも認められていない会場もあります。検討する場合は必ず早い段階で出展要項を確認してください。

コーナーの処理

壁面を直角に突き合わせるのではなく、角を丸めたり斜めに落としたりするだけでも、正面以外からの見え方が変わります。大きな造形を足さなくても効果が出る、最も手を付けやすい方法です。

立体構成を検討するときの実務

  • 高さ制限を先に確認する:展示会ごとに異なります。吊り下げ物がある場合は、その下端の高さにも規定があることがあります
  • 吊り下げの可否と申請期限:会場の構造と主催者の方針で決まります。申請期限は会期のかなり前です
  • グラフィックデータの作り方:曲面や円柱は、平面に展開したデータで作成します。仕上がりでの見え方と、データ上の見え方が一致しない点に注意が必要です。文字を曲面の中央に置くと端が歪んで見えるため、重要な情報ほど曲率の小さい位置へ配置します
  • 設営の手順:立体は平面より組み立て工程が増えます。搬入時間が短い会場では、事前に組み立て順を確認しておいてください
  • 防炎対応:展示会場は消防法上の防火対象物にあたるため、布地の装飾には防炎処理された素材が求められるのが一般的です。適用される基準は会場・自治体で異なるため、出展要項に従ってください

光らせる面と、形をつくる面を分ける

ここまで立体の話をしてきましたが、平面が不要という意味ではありません。

ライトボックスのように発光する面は、周囲より明るいために強く目を引きます。これは平面だからこそ成立する見せ方で、製品写真やキービジュアルを1点集中で見せたいときに効果があります。一方、立体構成が担うのは、遠くから存在を知らせ、いろいろな角度から認識されるようにすることです。

役割が違うので、競合しません。形で見つけてもらい、光で足を止めてもらう。この組み合わせが、小間の中で最も効率よく機能します。立体側は電源を必要としないため、限られた小間の電気容量を発光部と製品展示に集中できるという実務上の利点もあります。

まとめ

ブースの設計は、バックウォールに何を書くかから始めがちです。ただ、その前に決めるべきことがあります。会場のどこから、どの角度から、自社のブースが見えるようにするか。

平面だけで構成すると、答えは「正面の通路から」に限定されます。曲面、タワー、アーチ、吊り下げといった立体要素を組み合わせれば、認識される範囲そのものを広げられます。テンションファブリックは、その形を軽さと張りを保ったまま実現できる方式です。

誉展示会では、小間の位置と通路の関係を踏まえた立体構成のご提案をしています。小間図面が出た段階でご相談いただくと、どの方向からの視認を優先すべきかを含めて設計できます。

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